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作者別02 作者別03 タイトル キャラ 作者 続き 化物語 ◆BAKEWEHPok様 『まよいスター』阿良々木×八九寺 八九寺真宵 ◆BAKEWEHPok様 『まよいラバー』 八九寺真宵 ◆BAKEWEHPok様 『まよいカウ』 八九寺真宵 ◆BAKEWEHPok様 『かれんマウス』 阿良々木火憐 ◆BAKEWEHPok様 『しのぶナイト』 忍野忍 ◆BAKEWEHPok様 『まよいスプリング』 八九寺真宵 ◆BAKEWEHPok様 影騙 忍野忍 ◆BAKEWEHPok様 かれんスリープ 阿良々木火憐 ◆BAKEWEHPok様 つきひスリープ 阿良々木月火 ◆BAKEWEHPok様 崩子×いーちゃん 闇口崩子 へたれ181 ◆dgPYytUmjk様 赤×いー 哀川潤 へたれ181 ◆dgPYytUmjk様 零×いー 零崎人識 へたれ181 ◆dgPYytUmjk様 哀川×女体化いー 哀川潤 へたれ181 ◆dgPYytUmjk様 みいこさん×いの字 浅野みいこ へたれ181 ◆dgPYytUmjk様 出×医 匂宮出夢 へたれ181 ◆dgPYytUmjk様 『戦車ズボン・化物語編』 化物語 特快うねっこ ◆GbipAOdJ9JL5様 子荻×いーちゃん 萩原子荻 554 ◆/HshIoGij2様 いーちゃん×子荻 萩原子荻 554 ◆/HshIoGij2様 いーちゃん×子荻 萩原子荻 554 ◆/HshIoGij2様 いーちゃん×子荻 萩原子荻 554 ◆/HshIoGij2様 UD宣伝小ネタ 戯言シリーズ 554 ◆/HshIoGij2様 ハロウィン小ネタ 戯言シリーズ 554 ◆/HshIoGij2様 クリスマス小ネタ 戯言シリーズ 554 ◆/HshIoGij2様 『兎吊木垓輔の美術心理学』 兎吊木垓輔 554 ◆/HshIoGij2様 クリスマス小ネタ 化物語 554 ◆/HshIoGij2様 クリスマス小ネタ 戯言シリーズ 554 ◆/HshIoGij2様 節分ネタ 戯言シリーズ 554 ◆/HshIoGij2様 やらないかネタ 戯言シリーズ 554 ◆/HshIoGij2様 人識×玉藻 西条玉藻 ◆ilkT4kpmRM様 小ネタ 戯言シリーズ ◆ilkT4kpmRM様 小ネタ 化物語 ◆ilkT4kpmRM様 『ぼくときみの壊れきった世界』 病院坂黒猫 やる気のない駄人間 ◆K05j0rAv6k様 『零崎舞織の人間創造』 零崎舞織 やる気のない駄人間 ◆K05j0rAv6k様 『携帯リスナーの赤い夜』 無桐伊織 やる気のない駄人間 ◆K05j0rAv6k様 『二度あることは五百十二度ある?』 ツナギ やる気のない駄人間 ◆K05j0rAv6k様 赤×いー 哀川潤 ラスタマン ◆mr.7wNCCbA様 阿良々木×戦場ヶ原 戦場ヶ原ひたぎ ◆K.I.DssBEE様 阿良々木×黒羽川 羽川翼 ◆K.I.DssBEE様 『ひたぎフェアリー』01/02 戦場ヶ原ひたぎ ◆K.I.DssBEE様 『竹取山補稿』 西条玉藻 ◆K05j0rAv6k様 『終わる零崎』 零崎舞織 ◆lQ0GSj49/k様 『かれんオーラル』 阿良々木火憐 ◆NQZjSYFixA様 『ポケエージェント』 阿良々木火憐 ◆NQZjSYFixA様 阿良々木×戦場ヶ原 戦場ヶ原ひたぎ ◆qVkH7XR8gk様 『するがローズ01』/02/03/04/05/06/07/08 神原駿河 Roseman ◆QXQSREsB9Q様 『こよみランタン』01/02/03/04 化物語 Roseman ◆QXQSREsB9Q様 『こよみウイルス』 化物語 Roseman ◆QXQSREsB9Q様 小ネタ 化物語 Roseman ◆QXQSREsB9Q様 クリスマス小ネタ 化物語 Roseman ◆QXQSREsB9Q様 ひたぎニューイヤー 化物語 Roseman ◆QXQSREsB9Q様 『戯言遣いと人類最強』 哀川潤 ◆Tb07pjbDd.様 友いー 玖渚友 ◆Tb07pjbDd.様 小学5年生阿良々木暦ちゃん(男)総受け 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 エロ補完編01/02 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×忍01/02/03 忍野忍 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×戦場ヶ原01/02 戦場ヶ原ひたぎ ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×撫子 千石撫子 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×忍01/02 忍野忍 ◆zO7AQfurSQ様 番外、羽川編 羽川翼 ◆zO7AQfurSQ様 後日談エロ 羽川翼 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×忍 忍野忍 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×戦場ヶ原 戦場ヶ原ひたぎ ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×撫子 千石撫子 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×忍01/01/02 忍野忍 ◆zO7AQfurSQ様 エロシーン抽出編 忍野忍 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×忍 忍野忍 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×忍 忍野忍 ◆zO7AQfurSQ様 暦と火憐 阿良々木火憐 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×戦場ヶ原、誕生日 戦場ヶ原ひたぎ ◆zO7AQfurSQ様 エロシーン抽出編 戦場ヶ原ひたぎ ◆zO7AQfurSQ様 神原×忍×阿良々木01/02 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×八九寺01/02 八九寺真宵 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×月火 阿良々木月火 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ、トリップ 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×月火 阿良々木月火 ◆zO7AQfurSQ様 七花×とがめ とがめ ◆zO7AQfurSQ様 様刻×黒猫 病院坂黒猫 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 七花×とがめ とがめ ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ、酒落ち 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ、忍 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 七花×とがめ とがめ ◆zO7AQfurSQ様 阿良々木×撫子 千石撫子 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ、火憐&月火×暦 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ、火憐×神原 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 小ネタ、クリスマス 化物語 ◆zO7AQfurSQ様 しのぶイヤー前半戦/後半戦 忍野忍 ◆zO7AQfurSQ様 おふろシスターズ 阿良々木火憐・月火 ◆zO7AQfurSQ様 おふろシスターズ後日談 阿良々木火憐・月火 ◆zO7AQfurSQ様 月火×神原小ネタ 月火・神原 ◆zO7AQfurSQ様 弱気神原 神原駿河 ◆zO7AQfurSQ様 忍小ネタ 忍野忍 ◆zO7AQfurSQ様 神原小ネタ東京 神原駿河 ◆zO7AQfurSQ様 神原小ネタ東京都庁 神原駿河 ◆zO7AQfurSQ様 神原小ネタ独楽 神原駿河 ◆zO7AQfurSQ様 バレンタイン小ネタ忍 忍野忍 ◆zO7AQfurSQ様 バレンタイン小ネタ忍野 忍野メメ ◆zO7AQfurSQ様 バレンタイン小ネタ貝木 貝木泥舟 ◆zO7AQfurSQ様 バレンタイン小ネタ瑞鳥・蝋燭沢 瑞鳥・蝋燭沢 ◆zO7AQfurSQ様 神原小ネタ溜息 神原駿河 ◆zO7AQfurSQ様 神原超小ネタ 神原駿河 ◆zO7AQfurSQ様 神原小ネタメス 神原駿河 ◆zO7AQfurSQ様 黒神 めだか☆† 黒神めだか ◆ZjqBzMECHA様 『付物語つきひポリネシア』暦×月火 阿良々木月火 ◆zt2LoDfx0w様 『付物語かれんジィー』暦×火憐 阿良々木火憐 ◆zt2LoDfx0w様 『おまけつきひヘアラチオ』暦×月火 阿良々木月火 ◆zt2LoDfx0w様 ページ最上部へ
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「おや、阿良々木先輩。奇遇だな」 「…神原。それは人を追い回した後に言う言葉じゃない」 「追い回したとは人聞きの悪い」 「じゃあなんて」 「ストーキングだ」 「人聞き悪い!」 「ふふふ、今日もなかなかツッコミが冴えるな」 「このクソ暑いのに…、ツッコむ方の身にもなってくれ」 「阿良々木先輩、こんな往来の真ん中で下ネタは…」 「冤罪だ!」 「ははは」 「流すな、流すな!」 「まぁ、そんなことはともかく」 「僕の変態疑惑が根付くだろ」 「最初から変態ではないか。 昨晩、私を弄って悦んでいたのは誰だったか」 「僕にはアリバイがあるぞ!?」 「知ってる」 「なんで!?」 「聞きたいか?」 「いいです」 「まぁ、私の夢の中で何が起ころうと不思議じゃあるまい」 「夢オチかよ! ああ良かった!」 「…この場合、夢オチと言う表現は正しいのだろうか?」 「いや知らないよ…」 「ところで阿良々木先輩。これから何か用事でもあるのか?」 「いや、特には」 「いや、分かるぞ阿良々木先輩。 阿良々木先輩は私が追いかけ…もといストーキングしている事に気が付いていた」 「言い直すんだなそこ」 「そしてこの道を少し行った所に、あまり人気の無い空き地がある。 そこから見出される答えは…」 「いやだから、特になにも」 「青姦だな!」 「…神原、選べ。グーとパーとチョキだ」 「全部!!」 「うるせぇよ!」 戻る
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人気商品一覧 @wikiのwikiモードでは #price_list(カテゴリ名) と入力することで、あるカテゴリの売れ筋商品のリストを表示することができます。 カテゴリには以下のキーワードがご利用できます。 キーワード 表示される内容 ps3 PlayStation3 ps2 PlayStation3 psp PSP wii Wii xbox XBOX nds Nintendo DS desctop-pc デスクトップパソコン note-pc ノートパソコン mp3player デジタルオーディオプレイヤー kaden 家電 aircon エアコン camera カメラ game-toy ゲーム・おもちゃ全般 all 指定無し 空白の場合はランダムな商品が表示されます。 ※このプラグインは価格比較サイト@PRICEのデータを利用しています。 たとえば、 #price_list(game-toy) と入力すると以下のように表示されます。 ゲーム・おもちゃ全般の売れ筋商品 #price_list ノートパソコンの売れ筋商品 #price_list 人気商品リスト #price_list
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するがローズ エピローグ 国道沿いのミスタードーナツ。 「ふん…やはりアロエヨーグルト味かの…いや抹茶も捨て難いの…」 「いいから話を聞け、忍。何のためにドーナツを奢ってやったと思ってるんだ」 「もへもへ…ふまむも…」 「食べてから喋れ!」 右頬にはフロッキーシュー。 左頬にはD-ポップ×3。 さらに、口にチュロス(シナモン)を咥える。 何だか、冬眠前のリスみたいで微笑ましい。 「…ぬし、今笑ったじゃろ」 「え!?いや全然!滅相もない!」 「本当かや……。して、何の話じゃったかの」 「昨日の神原の話だよ!さっき言ったばっかだろ!」 コイツ、歳くってとうとうボケたのか。 「…聞こえておるぞ…」 「嘘だっ!」 「前にも言ったじゃろう、儂とお主の感覚は共有されておると」 「ああ…そういやそうだったな」 「じゃから、主様が絶頂に達した時は色々破裂しそうで大変だったわ」 「どこが!?」 「…れでぃーの口からそれを言わせるのかや」 「あ、いや…そんなつもりは」 「脳幹じゃ」 「どうしてそんなところっ!?」 「頭の使いすぎじゃ」 「使いすぎで破裂するモノなのか!?」 やっぱり、リアルにボケてきてるんじゃないか。 見かけは子供、頭脳は痴呆! その名も吸血鬼シノブ! 「…全部聞こえておるぞ」 「…悪かったよ。で忍、あのまま神原を放置してたら一体どうなったんだ?」 「どうもこうも…薔薇は知らんが、藤や蔦なら知っておるぞ、まあ同じ植物だか ら、結末も同じじゃろう」 「そんなものなのか、で?」 「主が体験したように、大概植物の怪異は人を糧とする、人を喰ろうたり取り込 んだりして成長していくのじゃ」 「ええと…つまり?」 「あのまま放っておけば、小娘は怪異に取り込まれ、ぬしらも喰われていた、と いうことかの」 「…結構恐ろしい怪異だったんだな…」 「安心せい、街中を覆うような大樹になるには数ヶ月はかかる、その間に、燃や してしまえばいい話じゃ」 「でも、それじゃあ神原が…」 「うむ、確実に助からんの」 「そうか…よかった」 薔薇とは違うが、蔦などの植物は他の木に巻き付いて成長する。 そして、成長するにつれていつの間にか巻き付いていた木を締め上げ、枯らして しまうそうだ。 それを考えると、巻き付かれた神原はあの時点でかなり危険だったのかもしれな い。 決して解けない蔓。 締め上げられる幹。 まさに、「絞め殺し植物」に相応しい諸行といえよう。 「あーっ!」 「どうした忍!?」 「アップルパイ…落とした…」 「…もう買わないぞ」 サイフ(マジックテープ)残金 残り437円 するがローズ こんどこそ 完 戻る
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「阿良々木くん、温泉行きましょう」 「ぶっ、マジか!」 「きたないわね、そんな驚くことではないでしょう」 「男としてカップル温泉に期待しないわけがないだろ」 「日帰りよ」 「……いい、行かない」 「湯上りひたぎー」 「…………」 「石鹸の香りひたぎー」 「…………」 「髪の濡れたひたぎー」 「明後日なら空いてる」 「阿良々木くんってちょろいわね」 戻る
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オープニング あまりに脈絡のない展開なので申し訳ない限りだが、どうやら拉致監禁されてしまったらしい。 これを聞いて驚かないで欲しい事なのだが、全くを持って、攫われた時の事を覚えていない。一体誰が、何時、何処で、どうして、どの様に、何の為に、連れ去られたのか解らない。 その為、正直言って攫われたというよりも、気がついたらここに立っていた、という感じの方が近い。 今現在、僕の目の前にあるのは、ここにあるのは壁と床と天井だけです、と言っても良いぐらい何もない部屋である。 おまけに真っ白、天井そのものが照明になっているのか、強力な光が降り注ぎ、部屋の角にすら陰りは落ちていない。距離感を見失いそうな、そもそも壁を見失いそうな部屋である。 そういえば昔どっかで、純白の部屋で育った子供はキレ易くなる、とか聞いた気がする。なるほど確かに、何も無い真っ白な部屋というのは、どうにも圧迫感というか何というか、何か苛立つものがある。 割と結構な不快感だ。生理的嫌悪、という奴だろうか。正しく徹底した白っぷりである。 純白である。 ピュアホワイトである。 だがそれだけに、僕の影はくっきりと床に映っていた。まるで人型の穴か何かのように数分の乱れも無い真黒、それが純白の床にある。そして僕の影には、一本の矢が刺さっている。 そして、そして、そして。 まるでそれが杭だとでも言うかのに様に、僕の身体は極僅かにも動かない。 鎖に締め上げられた、というよりも、コンクリートに埋められた、って感じ。拘束されるというか、そもそも自分の身体は動く様には出来ていないんじゃないか、と、そう考えそうになる徹底した不動である。 「…………いや、マジで」 あ、喋る事は出来た。それに耳をすませば(この表現であっているのかは解らないが)、心臓の動く音がわかる。動けない、といってもそれは随意な部分だけであり、生理的な部分の動きは問題無いようだ。 まあ、そうでなかったら僕は生きていないだろうか、当たり前と言えば当たり前の話だが。 取り合えず当座は死なずに済みそうだ……いやいやいや、たとえ生理的に動けてもこのまま身体が動かなければ、遠からん内に餓死なり何なりで死ぬだろうけれども。 ああでも、どうやらこの部屋には僕以外にも人間がいるらしかった。気配と言うか、話し声と言うか、まあそんな感じのものが聞こえてくる。それから考えるに、部屋の中にいるのは、十や二十ではきかない、それなりの大所帯である様に思えた。 「その鳴き声、阿良々木君ね」 と、耳をすます僕を呼ぶ声をした。否、聞き覚えのある毒舌、というべきだろうか。 「戦場ヶ原、か?」 戦場ヶ原ひたぎ。 この善良無垢なナイスガイ、阿良々木暦を捕まえて鳴き声とか言う奴を、僕は彼女の他に知らない。いや単に僕かどうかも解らないのに人の声をいきなり鳴き声呼ばわりする奴を他に知らないというか、他にいて欲しくないだけなのであるが。 嫌だなぁ、罵詈雑言だけで人を区別出来るのって。 「失礼な事を思われた気がするわ」 「気のせいだろ」 「失礼な事をされた気がするわ」 「返事しただけだろう!?」 単純な受け答えすら許されないのか! 「あら、阿良々木君ごときが私に声をかけるだなんて、失礼以外の何があるのかしら?」 「お前の中で僕はどんだけ低ランクなんだ!?」 「ドブネズミ以下よ」 「即答!?」 「冗談よ」 「本当だな、本当に冗談なんだな!?」 「ええ……冗談抜き、本気よ」 「つまり冗談じゃないって事か!」 「そんな事無いわ。本当よ? 阿良々木君が虫以下だなんて、そんな事ある訳ないじゃない」 「…………………」 「阿良々木君は虫けら道以下よ」 「そんなこったろうと思った! そう言うと思ったよ!!」 本当に期待を裏切らない奴だな、戦場ヶ原ひたぎ! 畜生、おちおち期待も抱かせやしねぇ! 油断も隙もありゃしねぇ! 「犬の糞以下よ」 「まだ下がるのか!? 一体お前の中で僕はどんな位置づけなんだ!」 「……ぇ、そんな事を、わ、私の口から言わせる気?」 「何だその反応! 本当に僕はどんだけ下だと思ってんだよ! お願いだから教えてくれ!」 「自分の下等さを言って欲しいだなんて、あいかわらず阿良々木君はマゾね」 「という事はお前はサドだな!? その認識が通せるなら僕は敢えて汚名を被るぞ!」 「大丈夫、安心しなさい。……阿良々木君の位置づけはね」 そこで戦場ヶ原は、慈愛に満ちた口調で、言った。 「――縁の下の力持ち、よ」 「それは単に最底辺ってだけだ!!」 オブラートに包めば何でも良いと思うなよ! その程度で誤摩化せると思うなよ! 「私の中でそうだって言う事は、つまり全世界の共通認識よ」 「僕の存在は地球上の生物全てを支えていたのか!」 アトラスもびっくりだ! すげぇ、僕は今神を超えた!! 「いえ、単なる下等生物よ」 「言い切った! 言い切りやがった!!」 「下等静物よ」 「もはや生き物ですらない!」 「そうね、静かな阿良々木君の存在価値なんて、マイナスだもの」 「マイナス!? ゼロですらないのか!」 ここにあるという、それすらも許されないというのか! 「本当、喋ってこその、阿良々木君よ」 「……まぁ、お前等のせいで喋らされてるって気もするんだけどな」 羽川翼、とか。 八九寺真宵、とか。 神原駿河、とか。 千石撫子、とか。 忍野メメ、とか。 あとは、忍野忍、とか。 でもひょっとしたら、それこそ冗談ではなく、本当に喋り相手が欲しかったのかもしれない、と、思わないでも無い。確認出来ないほどに身体が動かせないのだが、どうやら戦場ヶ原も身体が動かせないようだ。 僕と同じ状況だというのなら、ひょっとしたら、見ず知らずの場所で理由も解らず身体が動かせない、この状況に心細いのかもしれない。 ……………………。 ………………………………。 …………………………………………。 いや、どうかなぁ。こいつに心細いとか、そんな感情があるかなぁ。僕の、まあ、彼女ながら、そこは甚だ疑問だ。こいつの心で細い場所なんて、先っちょだけなんじゃないか? 先っちょだけ細い、要するに棘型。 棘型の心。 心に棘、ならぬ、棘の心を持つ女。 戦場ヶ原ひたぎ。 なぁんて、およそ恋人に抱かないであろう感情を思っていると、何時の間にか、一人の男が現れた。 「駄人間は騒がしいねぇ、騒がしいのが駄人間なんだねぇ」 それは世にも珍しいジャケットを着た、中肉中背の男だった。 いや、なんて表現すれば良いんだろうな、あのデザイン。こう表現し辛いっていうか、解り辛いっていうか、普通の人間は着る以前に思いつかないであろうデザイン。 あ、でもアレに似てるな、あのジャケット。 安全ピンに。 安全ピンの様な、ジャケット。 真っ赤な、安全ピンの様な、ジャケット。 「やっぱり駄人間は駄人間だよね、煩いしでかいし面倒くさいし、ていうか可愛くないし。やっぱり僕の魔法で『固定』すべきは少女なんだよ。 そもそも僕は少女専門なんだからさ、全く、何が悲しくて十代より二十代に近い、それも男も含めた連中に使わなきゃいけないんだろうね、あの人の命令じゃなかったら絶対にやってないよ」 「……影谷蛇之!?」 すると、背後から女の子の声がした。叫ばれたのは名前、それがあの安全ピンみたいなジャケットを着た男の名前なのだろうか。 「なんで生きてるのがお前なの!? 影も形も残さず葬ったのが、あの時の私の筈なのに!」 これまた斬新すぎる喋り方だった。 この男と知り合いなのだろうか。だとすれば納得する気がしないでもない、変な喋り方である。ひょっとして外国人か何かなのだろうか。だとすれば、さっき男が言った単語も、納得しないではない。 魔法、とか。 『固定』、とか。 そして、僕の背後に立っているだろう彼女の姿を見たのだろう。影谷というらしい男は、笑った。 …………。 うぁ、気持ち悪い笑い方だな。 「あっははははぁっ! ひっさしぶりだねりすかちゃん、良い顔するねりすかちゃん、可愛いねりすかちゃん、愛してるよりすかちゃんっ! あっははははっはぁ、少女でもねぇ駄人間共を『固定』したかいがあるってもんだぁ! またりすかちゃんをこの目で見る事が出来たんだからねぇ! あーりすかちゃんりすかちゃんりすかちゃんりすかちゃんりすかちゃんりすかちゃんりすかちゃん、りーすかちゃーんっ!」 影谷蛇之。 であって一分になるかどうかの付き合いだが、人となりは理解出来た。 ぶっちゃけ、変態である。 ……絶対なんか犯罪犯してるよ、こいつ。 だがイナバウアー的に大爆笑していた影谷は、唐突に、鍬を振り下ろす様な軌道で身体を起こし、にやついた顔で僕らを見た。そして、言った。 「はーいこれより君達にはっ、殺し合って頂きまーすっ!」 「……………………」 は? 「ルールは簡単! 殺し合うアイテムとか食い物とは支給してやるから、それを使って自分以外を残らず皆殺しにしろ、それだけでーすっ! あっはははぁ、超簡単、猿でも解る、駄人間でも解るぅ!! そこに痺れる憧れるぅっ!」 ……………………え、えぇ? ちょっと待てよ、殺し合いとか、何だよそれ。 「……いきなりなんだよ!?」 叫んだ僕を、影谷は振り向きもせずに答えた。いや、答えるというよりも、狼狽える僕らが面白くて、もっと狼狽えさせてやろうとしている、そんな感じのする対応だ。 「お、訊いちゃう、訊いちゃう? でも答えてあげないんだなぁ! あ、でも僕達に逆らわない方が良いよぉ? 君達の首にあるそれが、逆らった途端に、ボンッ! だからねぇ」 「首、輪?」 そう言われて、僕は初めて気がついた。自分の首を一周する、金属みたいに固い物に。 「そんな事は訊いてねぇんだよ!!」 だがそこまで言った所で、さっきと同じ女の子の声が、しかしまるで違う口調で、響いた。 「死にくさった死罪人がっ! このわたしにしっかりきっかり殺された筈のお前がっ! 何で生きてるんだって訊いてるんだ!!」 殺した? この、それこそ小学生みたいな幼い声をした、おそらく女の子によって? 「生き返らせられたのはお前なんだろう!? 蘇生されたんだろう!? ……お父さんに!!」 生き返らせる? 蘇生される? お父さんに? あの子の父親に? 僕も怪異とか、この世の裏事情には足ならぬ首を突っ込んでいるが、死んだ人間が蘇るだなんて、聞いた事ないぞ? 忍野だって言わなかったし……ていうか、ありえるのか、そんな事。人を生き返らせる、なんて。 だがその問い掛け(というか詰問)は、正解らしかった。 「だーいせーいかーいっ! その通りだよりすかちゃん、りすかちゃんがその通りだよっ、さすがだなぁりすかちゃん! りすかちゃんりすかちゃんりすかちゃーんっ! あっははははぁ!」 言われて、影谷は再び大爆笑。 「その通り、見事キミ達に殺されちゃった僕は、この度あの人のお陰で生き返らせて頂きましたっ! 君達を殺し合わせる、このゲームを動かす為にねぇ!」 「……ゲーム」 殺し合いが、ゲーム? ………………どういうつもりだ、この男。 「……てめぇっ!」 「でーはっ!」 僕が言おうとした、直前。 影谷蛇之は、唐突に会話を区切った。 「君達の殺し合いゲーム、バトルロワイヤル、その主催様である??」 溜めて。 溜めて。 息を吸って。 「――水倉神檎さんからの伝言!」 直後。 影谷の顔から、身体から、一切の個性が抜けた。 まるで、別人に乗っ取られた様な。 まるで、別人になった様な。 そんな感じになって。 出てきた、声は。 ――殺し合え 「……!?」 違う。 ――殺し合って、最後の一人になれ 違って、いた。 影谷蛇之の口から出た、その声は。 影谷蛇之の声ではなかった。 それ以前に。 ――そうすれば これは。 本当に。 ――如何なる望みも、くれてやる 人間の。 声なのか。 「……以上」 そこで。 そこで。 曰く、水倉神檎なる人物の声は、途切れた。 後に残されたのは、 「でーしたぁっ!」 気持ちの悪い笑みを取り戻した、影谷蛇之だけだった。 理屈だけなら、幾らでも説明する事が出来る。単なる声芸とか、裏声とか、そうでなくとも部屋のどっかに機会が仕込まれていて、それで声を弄くっただけの演技だ、そう言う事も出来る。 でも、だが、しかし、だ。 それを言わせない、信じさせない。 声、だった。 「……………………」 洒落にならん。 あの声は洒落にならん。 あの声で、本当に、真髄に、心の底から理解してしまった。 僕達は今、殺し合いを強要されているのだ、と。 「……戦場ヶ原」 やばい。 これはやばい。 殺し合いを求められたのは、四十人前後はいるであろう、この部屋の人間全てだろう。だとしたら、戦場ヶ原だってその一人に違いない。こいつも、殺す殺されの場に、巻き込まれているんだ。 「何かしら」 なんて、本人は答えを返したけれど。 などと、僕は言葉そのままに受け取るつもりはない。 声も表情も、ひょっとしたら感情でさえも、数分違わずに制御出来る、そんな人間が、戦場ヶ原ひたぎなのだ。何を思っているのか知れないが、あの声を聞いた上で、心の底から平静を持っているとは思えない。 だって、僕も持っていられないのだから。 このままでは、あの頃の再来だ。 戦争ならぬ闘争。 殴り合いならぬ嬲り合い。 取っ組み合いならぬ憎み合い。 あの、最悪の、春休みと同じ様に。 あるいは、あの日々以上の、状況に。 「きゃはきゃは」 ん? 「正直ふざてるとしか思えねぇーぜ? 殺し合え? 最後の一人まで? 上等だっつー話だろーがよ」 ひょっとして、さっきの笑い声だったのか? だとしたら随分いやな笑い声だな。ある意味、影谷とタメをはっていると行っても過言ではない。 笑い声に続いた男の声、だがその声は先ほどまでと同じ様に、僕の背後から聞こえてきたという訳ではなかった。方向にして僕の右手、大分距離が離れているように思える。頑張れば、姿ぐらいは見れるんじゃないか、ってぐらいに。 どうだろうか、と思い、必死こいて眼球を動かしてみると、どうやら声の主と思しき人物を視界に入れる事が出来た。 それは、袖を切り落とした黒ずくめの上に鎖を巻き付けた、忍ばぬ事、目立つ事この上ない男だった。その周囲には似た様な格好の人影が何人も立っている。 ひょっとしてアレは制服なのだろうか。どうにも動物を象っているように思えるけど……随分と奇抜(友好的表現)な格好である。 「おれら真庭忍軍。暗殺専門、殺し合い上等の忍者さんよ? 俺らがいるとこで殺し合えって、そりゃーもう結果を目の前にしてる様なもんだろーがよ」 真庭、忍軍。 忍軍。 忍者。 このご時世に……しのび! ていうか、アンタの格好、全然忍んでないじゃん! などと突っ込む事は出来ずにいると、蝙蝠というらしい男に向かって、影谷が近付いていく。 「んー、ん、んー、アンタ真庭蝙蝠、って奴だねぇ? 知ってるよ、知ってるのが僕だよ。連れてくる時に割と調べたからねぇ」 「ほう、そりゃ嬉しいねぇ。どーだよ、暗殺専門のしのびが誇る、十二頭領の一人の業績はびっくりだろ」 いや頭領が十二人もいたら統率も何も無いだろう。 「全くだねぇ、本当、数えるのが馬鹿馬鹿しくなる様な人殺しの回数だったよ。うん、その力は素晴らしいって言ってやるんだけどねぇ、駄人間相応のくそったれな性根も良いんだけどねぇ、ただ、それだとバランスがとれないんだわ」 「ばらんす?」 「均衡、配分、ってことさぁ。他の人達が君達によって一方的に殺されたんじゃ、面白くないんだよ」 そこまで言う頃には、影谷は蝙蝠の真ん前に立っていた。 「だからね、君達の力は僕達の方で、ある程度制限させてもらったよ」 「……あぁん?」 影谷がそう言った所で初めて、蝙蝠なる男は顔を顰めた。 「おいおい、何だそりゃ。人様の身体勝手にいじった、っつー事か? そーか? そーなんだな? ……ぶっ殺すぞテメェ」 そこで蝙蝠が見せた凄みは、およそ一般人には出し得ない気迫だった。 ひょっとして……。 まさか……。 本当に忍者なのか、この人! あんな目立つ格好で、本当に忍者だったのか! 影谷の方は、しかし変わらずに笑った。まるで、自分は何をされても死なない、というかの様に。 「あはっ、すごんだってダサイだけだよ、ダサイだけなのがお前なんだよぉ、真庭蝙蝠。所詮は駄人間が、粋がるなよぉ? 『影縫い』で動けない分際で……鼻と口塞いじゃうよ?」 ここにきて幽遊白書ネタの影谷蛇之。 どういう理屈か知らないが、というか、影谷の言葉を信じるなら、魔法の力によって僕達は動きを封じられているらしい。もっと信じるなら、多分この影に刺さっている矢が、その直接的な原因なのだろう。 だとすれば、真庭蝙蝠なるあの男は、一体どうやって、影谷蛇之に仕掛けるつもりなのだろう。 「は。おれ達はしのびだぜ? 手足なんざ使えなくても……人殺し位、朝飯前だってーの」 そうして真庭蝙蝠は。 ぺっ、と。 おえっ、と。 口から、沢山の、刃物を吐き出した。 「…………………………」 ちょっと待て! 有り得ないだろ、何だその物理的腹芸! 無理だろ、有り得ないだろ、なんで口から刃物を吐き出せるんだよ!? どんだけ頑丈な胃袋なんだよ!? 幾らしのびでも、意表をつくにも程があるだろう! そうして刃物の群は唾液混じり(汚い事この上ない)に飛び散って、そして、真ん前にいた影谷を、引裂いた。 引裂いた。 刺さった。 千切った。 切り取った。 そして身体前面が針山みたいになった影谷は、仰向けに倒れ込む。 そ、し、て。 「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」 上げられた悲鳴は、疑問符を持っている、ように聞こえた。 「い、痛い! 痛いぃ!? 何で、何でだよおぉ!? アイツが痛いのじゃなくて僕が痛いっ!? なんで僕がいたい!!」 「は、はぁ?」 何言ってんだこいつ。刺されたら痛いだろ、あんなに刺さったら、死ぬだろ? それが、普通だろ? 「どうして! 水倉っ、神檎!? どうして僕が死ぬ!? 生き返らせた僕が、どうしてまた死ぬのを許すのがお前なんだ!?」 「…………」 あぁ、そうか。 この男は。 影谷蛇之は。 自分が、あの途方もない力を声だけで感じさせる、水倉神檎に、守られていると思っていたんだ。 「ああああ……。ああ、あああぁ…………っ」 そうして影谷蛇之は、しばらくの間悶えて、そして次第に、動きを止めた。 死んだ、のだ。 だが僕達は、動けない。 「あぁん? どうなってんだこりゃ?」 きっと蝙蝠も、影谷を殺せば自分達は動けるようになると、そう思ったのだろう。しかしそうならなかった現実に、蝙蝠は怪訝な声をあげる。 直後。 ――しね 今度は影谷を介さずに、直接僕達の頭の中に、水倉神檎の声が響いて。 真庭蝙蝠の首が吹っ飛んだ。 「……な」 首がくっついていた首から、噴水みたいに血が吹き上がった。ほんの少し、残された手足や胴が痙攣して、首無しの身体が倒れる。倒れた後も、少しだけ痙攣しているようだった。その様は、さながらさっきまでの影谷蛇之の様ですらある。 それから後の事は、もう消化試合みたいな扱いだった。 「こ、こうもぴっ!」 「み、皆さ……ぐぼっ!」 「死にますね死にますね死にますね死にますね死にますね死にますねっ!!」 「お、鴛鴦!」 「蝶ちょ――」 「ぎ……っ!!」 「!!っ……くたに死いなくたに死いなくたい死だやいだやい」 「こ、こんな所で死にたぐっ!!」 「……畜生が!!」 かくして、真庭蝙蝠に続く形で、やたらと目立つ装束の忍者集団は、その首を失った。 残されたのは、鳥みたいな格好をした男と子供、そして、全身入れ墨の女の子だけのようだった。……って、あの女の子、さっきまであんな入れ墨あったっけ? だけど残ったその連中の、一番背の高い鳥みたいな恰好をしたその男は動じた風も無く言った。言いやがった、と表現してもいい。 「見せしめ、か」 と。 ――そうだ また、水倉神檎の声が、頭に響く。 ――道具をくれてやる ――情報もくれてやる。6時間毎に誰が死んだかを ――その度に、お前らをこれから送る場所も狭くなっていく ――殺しあえ。殺し合いに乗らなければ……24時間後に皆殺し、だ 首が、吹っ飛ぶってか。 上の言葉に従わなければ、クビ。 文字通り、クビがとぶ。 ――送ってやる。殺し合いの場所に 「……!」 そう言われた途端に、僕の目の前の風景が暗くなっていく。白かった壁はもはや灰色、というよりも、光が弱まっている訳でもないのに、薄暗く感じるようになっていた。 今の声を丸々信じるのなら、きっとこれから、殺し合いをする為の場所に送られるのだろう。転送魔法とかそんな感じだろうか。何でもありだ。 身体は、まだ動かない。 後ろにいる、戦場ヶ原は見えない。 でも、僕は、 「戦場ヶ原」 声をかけて。 「何かしら」 やっぱり何の変化もない、戦場ヶ原の声がした。 「絶対に生きろ。お前が生きてる限り、僕も生きる。絶対に、生きて帰るぞ」 僕達のいた、生きていた、これから生きる、僕達の街に。 「……格好良過ぎ」 あ、声色が変わった。 そう確認したのを最後に。 僕の視界は、完全にとんだ。 ← 000 →001 ← 追跡表 → ― 阿良々木暦 002 ― 戦場ヶ原ひたぎ 014 ― 水倉りすか 002 ― 真庭人鳥 011 ― 水倉神檎 [-]
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錯綜思考(策創試行) 「イシナギという魚をご存知ですか?」 大して険しくもない、ただ薄暗いだけの山道の中を、二人の人間が歩いている。 一人は足首まで届くほどに長い、美しい黒髪を携えた少女。 一人は伸ばしっぱなしの黒髪に、カチューシャをつけた痩身の男。 少女の唐突な問いに対し、男は「いや」と、まるで興味がないという風に、そっけなく返す。男の前を歩く少女も、まともな返答を期待していなかったように、男のほうを振り返ることなく言う。 「北海道に主に生息する魚です。一般的にはマイナーな魚ですけれど、体長が2メートルを超えるものもあって、大物狙いの方たちにとっては人気が あるようです。もちろん食用にもなります。煮付けや刺身として食べることが主だそうですね。ちなみに肝臓には、多量のビタミンAが含まれているそうですよ」 「へえ」男は、あくまでそっけなく言う。「肝臓まで食べるのかよ、その魚」 「いえ、ビタミンAとはいってもあまりに多量すぎるので、食べてしまうと過剰症を起こして、頭痛、吐き気、皮膚剥離などの症状が出るそうです」 「毒じゃねえかよ」 男が呆れたように言うと、少女はくすりと笑った。「そうです、イシナギは危ないんです」 男はまた「へえ」と返す。それは先程のそっけなさとは別の、知っていることを今初めて聞いたように振舞うような、微妙な白々しさがあった。 それからまた、二人は会話を交わすことなく山道を歩き続ける。山道とはいっても、辺りに生い茂っているのは樹木の類ではない。 竹である。 広大な面積の、そのほぼ全てを青々とした竹で覆われた山。 地図に記された名は、雀の竹取山。 少女が先を歩き、男がその後に続いて歩く。頂上から麓へ向けて、下山する形で。 少女のほうは、高校の制服らしき特徴的なセーラー服。男のほうは、薄手のタンクトップにハーフパンツ、足元はなんと下駄という、どう考えても山歩き には向いていない服装であるにもかかわらず、どちらも不自由そうなそぶりを見せることなく、軽快な足取りで進んでゆく。 少女が懐中電灯で照らしているとはいえ、足元が少し見える程度の山道を坦々と歩いてゆく二人。その自然な足取りが、逆に不自然に見えてしまうような光景だった。 「ところで、奇野さん」少女が、今度は振り返って言う。「今のこの状況について、奇野さんはどうお考えですか?」 奇野と呼ばれた男はその質問に対し、少し嫌そうな表情を見せた。 「どうって言ってもな――まあ、非常識っつーか、信じがたい状況ではあるよな。信じる信じないの話じゃねえのかも知れないけどよ。 話は単純に見えるのに、突拍子もない部分が多すぎる。なんていうか、現実的な夢の中にいるみてーだ」 「現実的な夢、ですか。なるほど」 実際にはその逆でしょうけどね――少女は独り言のように言って、また小さく微笑んだ。 逆――現実的な夢の、逆。 夢のような、現実。 男――奇野は、数時間前に自分が見た光景を回想する。ほんの数分間の間に繰り広げられた、いっそ滑稽ともいえるくらいに不条理な光景。 血、肉、骨、首、臓器、脳漿、死体。 そのすべてが、今ではもう、幻のように消えうせて。 ………。 すべて、現実なのか。 あの光景も、今の、この状況も――― 「『現実的で構わないから、いっそ夢であってほしい』」 はっとしたように、奇野は顔を上げる。 「そう思っていますか? 奇野さん」 少女は振り返ってはいなかった。しかし奇野は、少女のその言葉だけで、視線とはまた別の何かによって射すくめられたような感じがした。 「余計な心配だよ、お嬢ちゃん」 余裕を表現するためか、奇野は肩をすくめた。 「お嬢ちゃんこそ、実際ついていけてねーんじゃねーの? あんた、一般人なんだろ? それがこんな、冗談が冗談してるみたいな状況に放り込まれて」 「もちろん夢であってほしいと思っていますよ。私は」 少女はあっけらかんと言う。 「奇野さんの言うとおり、私は見てのとおりの普通の女子高生ですから。私からすれば、現実的な夢も夢のような現実もありません。夢のように夢心地ですよ。間違って醒めてしまいそうです。 夢の中というよりも、漫画の中にいるような、あるいはゲームの中にいるような、いやむしろ小説の中にいるような心地です」 「小説…」 なぜだろう、そこだけ妙に納得がいく気がするのは。 「それにしちゃあ、随分と軽く構えてるように見えるけどな」 「重く構えるだけ動きづらくなるだけです。当然、軽く見ているつもりもありませんけれど」 少女の声色が、少しだけ真剣味を帯びる。 「今の状況に救いがあるとすれば、不条理な状況ではあれど、状況そのものが不鮮明ではないというところでしょう。ですから今のところ、 地に足がついている感じがするのは確かです。何しろ目的がはっきりしていますからね。それ以外にすることがない、というくらいに」 「目的…」 「殺し合い」 真剣さを帯びていたとはいえ、その言葉はあまりにも軽く発せられた。 自分たちの目的。自分たちがここにいる理由。 そう、この状況がいくら信じがたいものであろうとも、そこだけははっきりしている。 殺し合い。 殺し合い以外に、することがない。 「………」 奇野自身、それは常々口にしたいと思っている言葉の一つだったが、それは軽々しい心構えで口に出してしまうと、予想以上にえらい目に遭う言葉であるということを、奇野は身をもって経験していた。 だからこそ、それをあっさりと口にしてしまう少女の態度に、奇野は少なからず違和感を覚えた。 こともあろうに、『参加者』の一人である奇野が、自分のすぐ背後を歩いているという状況にもかかわらず―― 「勝つつもりで、いるのか?」短い沈黙を、今度は奇野が破った。「こんな、でたらめな、無茶苦茶な闘いなんかに、強制的に放り込まれて、本当にあんた、最後まで生き残るつもりなのか?」 「生き残るつもり?」 少女の声は変わらない。 「そんなもの、生まれたときからずっとあります」 「………」 「生き残るつもりがなくて、人間がどうやって生き続けられるというのですか。偶然で死に、必然で死に、当たり前のように死に続けるこの 人間という種類が。生き残る気もないのに生き続けている人間なんて、それはただ他者によって生かされているというだけの事。生かされているのは 死んでいることと同義。生き恥という言葉すら勿体ない。そんなふうに生き続ける人間の気が、私には一向に知れませんね」 奇野はまた沈黙せざるをえなかった。 なぜこの少女は、こんな言葉を平然と吐く? 「それに」少女は仕切りなおすように言う。「可能性の上でなら、私たちが勝つ方法はいくらでもあります。最初、あの白い部屋の中で主催者側の人間が言っていた言葉、覚えていらっしゃるでしょう? この闘いではあらかじめ、バランスをとるための配慮がなされていると」 「……ああ」 「? どうかしまして?」 「いや――つまり、それがお嬢ちゃんの自信の根拠ってことか?」 「確かに私はただの普通の一般人ですけれど、目的が殺し合いだったところで、主催者側から平等に勝つチャンスを与えられているとするなら、 一般人という属性を悲観する意味はないということです。むしろ私のような一般人こそ、早い段階で動いておく必要があります。状況に呑まれるのは 三流の証拠。求められるのは俊敏な思考と、正確な試行。戦略こそが鍵です」 「クリティカルだな」 「タクティカルですね」 軽い冗談のつもりが軽く流されてしまった。立つ瀬がない。 とはいえ、少女の言い分には奇野もそれほど異論はなかった。おそらくこの闘いには、最初に見たような相当な力を持つ『異能者』が 何人も参加していることだろう。しかし主催者側によってその実力に均衡がもたらされているとするなら、目の前の少女でさえ、確かに 戦い方しだいではいくらでも勝ち目はある。知力と戦略。この闘いでは、それこそが物をいう。 しかし奇野がそういうと、少女は「それは違いますよ」と否定した。 「違う? 何が」 「戦略が鍵になる、とは言いました。しかしそれは『参加者の戦闘能力が均衡しているから、より巧みな戦略を練ったものが勝利する』 という意味ではありません。なぜなら私は、参加者の能力に制限が加えられているというのが真実だったとしても、それによって参加者全員の 能力のバランスが均衡しているとは考えていないからです。少なくとも、私が主催者側の人間だとすれば、絶対にそうはしないでしょう」 「なんでそう思う?」 「面白くないからです」 長い黒髪が竹やぶに引っかからないように気をつけるようなそぶりを見せながら、少女は細い竹藪を掻き分けてゆく。 山頂からは、既にだいぶ下っている。今は二合目あたりだろうか。足取りが鈍らないのは奇野も同じだったが、少女のほうは まともな道も道標もないはずのこの山道を、まるで自分の庭であるかのように、迷う気配もなく進んでゆく。 「先ほど私は、自分がゲームの中にいるようだ、といいましたが、例えとして言うならあの表現は間違いでしたね。なにしろここは まさにゲームの中なのですから。生身の人間が参加する、実際の命をかけたサバイバルゲーム」 バーチャルの世界でないというだけ――少女はそういった。 「他の人間が一方的に殺されたんじゃ面白くない――あの主催者側の人間は、確かそんなふうに言っていましたね。一方的な殺戮では ゲームにならない。ゲームにならなければ面白くない。だからバランスをとるために、力を制限する。それだけ聞けば、確かに自然な流れに 見えます。しかし主催者側の立場で考えた場合、どうしても納得できない部分があるんです。そうは思いませんか?」 奇野は沈黙を保った。少女は続ける。 「このゲームの参加者がどういった基準で選ばれたのか、私たちにとって走る由もありませんが、『他の人間が一方的に』という言葉から あの妙ちくりんな衣装の人達のような異能者を筆頭とした、いわゆるプロのプレイヤーと、私のようなごく普通の一般人が、同時に参加していると 推察されます。一方的な殺戮では面白くないといっておきながら、殺し合いという事柄に関して、経験も能力も、価値観さえも、極端なまでに 異なる人種を同じ舞台に立たせてしまっている。この時点で、既に矛盾していると思いませんか?」 「………」 「一般人を同じ舞台に立たせてしまっている以上、バランスをとろうと思えば、それは相当な制限を『異能者』の側にかけることを 意味します。当の異能者、プロのプレイヤーの方達からすれば不本意極まりないことでしょうけど、しかしそれは、主催者の側にとっても 望ましい状況とは言えるでしょうか。こんな特殊な場所、ステージを用意し、おそらくは相当な、異常なほどに現実離れした 『異能者』達をわざわざゲームのプレイヤーとして選出しておきながら、その肝心の『異能』に対し、主催者の側でわざわざ 制限をかけているんですよ? ゲームを観戦する側からすれば、その異能こそをフルに発揮してやりあってほしいと考えるのが 自然でしょう。バランスを重視するというのならそれこそ私のようなただの高校生を集めてやったほうがむしろ面白くなりそうです。 わざわざ武器まで与えているんですから。はたしてこれが自然な流れといえるでしょうか? 違和感で人が死ねるなら 私は既に15回は死んでいます」 奇野は答えない。少女はさらに続ける。 「このようなゲームに限って言えば、プレイヤーの能力の低下は、すなわちゲームのクオリティの低下に直結する。牙と爪をもがれた 獣同士の殺し合い。そんなもの見て楽しいと思いますか? かめはめ波は強すぎるから使用禁止、空を飛べると卑怯だから舞空術も禁止、 体力がありすぎるから、サイヤ人は身体能力も制限。天下一武道会にそんな制約があったら嫌でしょう。ヤムチャさんどころか、 ミスターサタンが素で優勝することだってあり得てしまいます。盛り上がりに欠けすぎです」 言いたいことはよくわかるが、最後の例えに意味はあるのか。 「まあ…確かに」 奇野は言ってから、内心でもう一度つぶやいた。まあ、確かに。 少女と話しているうちに、奇野は今の状況に対してやたら客観的な意識を持ってしまっていたことに気づく。考えてみれば、自分こそまさにその『異能者』の側として参加している人間の一人ではないか。 「つまり、お嬢ちゃんは」奇野は、右手に持った荷物を軽く持ち直しながら言う。 「こう考えてるってのか? このゲームの主催者は、ゲームのバランスをとるつもりはない、と」 「いいえ、違います」 少女はまたも否定する。 「主催者はこのゲームのバランスに対して最大限の配慮を行っているはずです。バランスという言葉を最初に持ち出したのは 主催者の側なのですから。ゲームバランスというのは、ゲームが成り立つか成り立たないか、その一端を握っているといっていいほど 重要なものなのですから。こんな大掛かりなゲームを作り上げるような人間が、そこをおろそかにするはずはありません」 それができなければクリエイターとして失格です。 少女はそんな風に言った。 「ですから、私の予想―予想というよりは期待ですけれど―している限りでは、主催者側からのあの言葉は、こういった意味を 持っていると考えています。『用意はしておいた。それを使って、後は自分たちで好きなようにバランスをとれ』」 「『それ』?」 「裏技、ですよ」 鳥でも飛び立ったのか、二人の頭上の竹の葉がざわざわと派手な音を立てて揺れた。 「レーシングゲームで言えば、ショートカットのようなものですか。とにかくそういったものがこのゲームの中には存在していると 私は期待しています。このゲームにおける最大のポイントの一つは、プレイヤーの自主性。主催者の側ではあえてバランスを取らずに 最終的なバランスはプレイヤーに決定させる。私たちにランダムに与えられた武器とはまた別の、ゲームの内部そのものに組み込まれた 不確定要素。ゲームのクオリティの最大限に維持し、かつ全てのプレイヤーに勝利条件を与えることができる、まさに裏技です。 あくまで予想に過ぎませんが、それを探してみる価値は十分にあると思います」 「………」 奇野はまたも、沈黙せざるを得なかった。 絶句、というよりも、言いたいことはあったが、それを口に出すべきか躊躇した、といった感じである。 反応に困ったといってもいい。 確かに少女の言い分には一理あると言えなくもない。しかしそれは少女自身、期待、という言葉を用いていたとおり、 あまりに希望的な観測というか、都合の良すぎる考えではないだろうか。 この少女の自信は、そんな曖昧なものに依拠したものだったのか? 大体裏技って何なのだ。コマンド入力でフルオプションに一足飛びでもする気でいるのか。 奇野は嘆息した。やはりこの少女は『一般人』の側の人間だ。 殺人鬼を恐れない人間は二種類いる。鬼をも恐れぬほどの力を有する人間か、殺人鬼を知らない人間のどちらか。 参加者全員が殺人鬼である可能性すらあるこの状況で、殺し合いという言葉を軽々しく使い、参加者の一人である奇野に、堂々と背中を預けている。 人が死ぬ光景すら目の当たりにして、なお現状を認識できていない。 まさしくゲーム感覚である。 この少女と組んだのは、ある意味では正解だったかもしれないな―― 奇野がそう思い、この雀の竹取山における少女との邂逅、この少女と組むことになった山頂での出来事を思い起こし始めた、そのほぼ同時。 奇野は、それを目視した。 ◆◆◆ 声をかけてきたのは、少女のほうからだった。 雀の竹取山、その頂上地点で一人佇んでいた奇野頼知の前に、散歩でもするかのような優雅な足取りで、その少女はあらわれた。 ごきげんよう、と、気さくな感じに声をかけながら。 それに対し奇野は、当然の如く警戒した。相手が年端も行かぬ少女であるということは、奇野にとっては気を緩める理由には まったくならない。むしろ今の状況において、丸腰のまま、しかも真正面から接近してきたことが、奇野にはこの上なく不気味に思えた。 そんな奇野に対して、少女はあくまでも優雅に、柔らかな笑顔を浮かべながら、両手を頭の上でひらひらと振った。 こわがらなくてもいいですよ、とでもいいたげな仕草で。 少女は言った。 私は、あなたと戦うつもりは毛頭ありません。 とりあえず、私の話を聞いてはいただけないでしょうか、と。 この時点で、奇野がこの少女に対して一切、何の攻撃も加えなかったことに関して疑問を挟む余地はあるかもしれない。 少女の言うところの『異能者』側の人間、プロのプレイヤーである奇野が、あからさまなまでに隙だらけの相手を目の前にして、 ただ相手の動向を窺っていたというのは不自然ではないだろうかと。 しかしこの疑問に対して、奇野はこう答える。奇野は相手が少女ということで気を緩めるこそなかったが、『この少女であれば いつでも殺せる』という感想を抱いた。このゲームの趣旨から言えば、目の前にいる相手を殺さないというのは確かに愚行であると いわざるを得ない。 しかし「殺す」という選択肢には、それが取り返しのつかない結果を生むという条件が付随する。少女を殺すことで、ゲームにおける 対戦者を一人減らすことができるのはプラスではあるが、逆に今ここで、少女の話をまったく聞かずに殺してしまった場合、 それがマイナスの結果を生むことにならないとは言えない。 要するに、「いつでも殺せるのならば、少女の話を聞いてからでも遅くはない」という、妥当というか、ごくありきたりとも いえるような理由において、奇野は状況を保留することを選択した。 少なくとも奇野自身は、自分がそういった考えを持って少女を攻撃することをしなかったと、そう自分を納得させている。 少女が続けて奇野に対して言ってきたことは、奇野にとっては、いや一般的な観点から見ても、十分に予想の範囲内のことだった。 要点だけを言えば、自分と組まないか、である。 この闘いを生き残るために、二人で組んで行動しましょう、と。 当然のこと、奇野があっさり「組む組む組みたい組みましょう」と少女の提案を受け入れることはなかった。 生き残るためには、一人で行動するより多人数のほうが基本的に有利、という理屈は正しい。しかしこのゲームは、 最終的に一人が生き残ることを前提としたゲームである。 何人がチームを組んだところで、生き残るのはただ一人。 そんな趣旨のゲームの中において、協力という言葉がどれほどの打算を含んでいるのか、それが分からないほどに奇野は馬鹿ではなかった。 しかし少女は、そんな奇野の心情を見越したように言葉を紡ぐ。 私はあなたを殺そうとは思っていません。 どころか、私はここで誰も殺そうとは思っていないんです。 もちろん、私が死ぬつもりもありません。 私はただ、生きてここから帰りたいだけなんです。 その矛盾をはらんだ言葉に、奇野は訝しんだ。 結論だけを言えば、少女はこう提案してきたのだ。このゲームの勝者に与えられる権利、どんな願いでも一つだけ 叶えることができるという、途方もない権利。 私の望みは、ただ生きてここから帰ること。 だから私は約束します。 『このゲームに参加した、全ての人間を生き返らせること』―――。 私が最後まで生き残った暁には、必ずそれを願うと。 ………。 奇野は黙って、その少女の言葉を聞いていた。 全員を生き返らせることができるのかどうがは定かではないですけれど、「何でも」と言ってはいるし、願い事が一つだけというなら ポルンガでなく神龍のほうでしょうから、大丈夫でしょう――そんな訳の分からない言葉さえ聞き流して。 結果的に、奇野は少女と組むことを了承した。 少女の甘言に乗せられたわけでは、勿論ない。 殺しはするが、必ず生き返らせる。 そんな言葉を真に受ければ、それこそ馬鹿である。 ただ奇野は、またも保留することを選択したのだ。少女を攻撃しなかったときと、ほとんど同様の考えにおいて。 今のうちは、利用できるものは利用しておこうと。 少女とて、まさか本当に最後まで奇野と行動するつもりではあるまい。 ころあいを見て奇野を殺すつもりだというなら、それより先に自分のほうがころあいをみて少女を殺せばいいだけの話。 それまでは、この少女を自分の『所有物』のひとつとして連れていておいても、おそらくマイナスにはならないだろう、と。 しかし奇野のこの考えは、先ほどの思考と同じく、奇野が自身の選択に対して納得のいく理由を考えたというだけの、 いわゆるあとづけに近いものだと言っていい。 奇野が少女に対し攻撃を加えなかったことも、奇野がこの少女と組むことを決定したのも、奇野にとっての、このゲームの スタート地点である雀の竹取山の山頂において、彼がそこから数時間ものあいだ「様子見」と称して動こうとしなかったことも、 余裕のあるときならば、相手を小馬鹿にしたような軽薄な態度で相手に望むはずの彼が、少女との会話においてほとんど受動的な 受け答えしかできていないことも、すべては同じ理由に基づくものであるといえる。 裏の世界の住人である奇野頼知は、殺し合いの場という一般的には非常識な状況も、むしろそれが日常であるような世界で生きてきた。 だから今現在の状況も、あまりに現実離れしているとはいえ、奇野にとっては日常の延長線上のようなものだと考えている。 殺し合いというなら、ここは自分のフィールドだと。 そういうふうに、むしろ余裕を持って臨んでいた。 しかし実際には、奇野は自分の心理状態を正確に把握できてはいない。 「呪い名」。 「殺し名」七名の対極に位置し、戦闘集団である「殺し名」とは真逆、非戦闘集団としての性質を持ちながら、 ある意味「殺し名」以上に忌み嫌われている集団。「呪い名」六名。 その三番目に名を連ねる「呪い名」が一名、「奇野」。 奇野頼知の有する能力は、人殺しという目的に対して言うなら、確かに特出して有効なものであるといわざるを得ない。 しかしその能力は、いうなら鳥籠の中の鳥を殺すような、相手を完全に自分の領域の中に引き込んでこそ威力を最大に 発揮するような、そういった類のものである。 この闘いの中において奇野は、殺し合いという名のフィールドの内部に強制的に放り込まれた形である。 裏の世界の住人とはいえ、奇野はあくまで「呪い名」なのだ。 戦場の外部にいてこそ威力を発揮する奇野が、完全に戦場の内部、殺し合いの渦中に引きずり込まれてしまった。 その現実が、自身でも気づかないうちに、彼からプロのプレイヤーとしての余裕を奪った。 恐怖、緊張、焦燥。そういったものが、今の彼の選択肢をどうしようもなく狭めている。 要するに、彼は状況に飲まれているのだ。 さきほど奇野は、少女が自分に安易に背中を預けている、と言った。 しかしそれは、奇野が自分の前を歩く少女の行動に完全に追従しているといってもよい形である。 行動だけではない。 協力という言葉にどれほどの打算がこめられているのか理解していたはずの奇野が、少女の言葉で安易に「組まされる側」に回ることを 良しとし、少女と出合ったときには確実に警戒心を抱いていたはずの奇野が、ゲームのバランスを問題にした先の会話において、 少女が自分たち、プロのプレイヤーと同等の力量を有しているという可能性を完全に失念してしまっている。 彼――奇野頼知は、自分が既に目の前の少女にすら飲み込まれつつあることに、まだ気づいていない。 ◇◇◇ 「なんだ――あれ」 麓まであと数分もかからないというところで、奇野は少し離れたところにある、細く背の低い竹が密集したようにして生えている 竹藪の中に、隠されるようにして置かれている何かを見つけた。 「あら、この距離からもう見えますか。目がいいんですね、奇野さん」 ビタミンAは豊富に摂ってるんでね――奇野は冗談めかしてそういった。 見えたとはいっても、この暗さの中では、さすがにそれが何なのかまでは判断できない。 少女がそれを隠している竹藪をかき分けるところに至って、ようやく奇野は、それが何なのかはっきりと見ることができた。 それは一台のジープだった。 アウトドア用だと一目でわかる、この竹藪に停められているのが不自然なほど豪胆なデザインのジープ。 運転席を見ると、そこには鍵がささったままの状態になっている。 少女はジープの窓をぽんぽんと叩いた。 「裏技とまではいきませんけど、まあ、隠しアイテムといったところでしょうね」 奇野はジープと少女を交互に見つめた。 裏技。 隠しアイテム。 まさか、こんなものが本当にあるなんて―― 「そういえば奇野さん」少女はジープの後部座席のドアを開きながら言った。 「山頂で私が言ったドラゴンボールのたとえ話、覚えていますか? 願いがひとつというなら、ポルンガでなく神龍だと言う話」 またか。奇野はそう言いそうになるのを内心で思うに留めた。 どれだけドラゴンボールが好きなのだ。 「神龍は叶えてくれる願いはひとつだけですが、一度に多人数の人間を生き返らせることができる。ポルンガは三つの願いを 叶えてくれますが、ひとつの願いにつき、生き返らせることのできる人間は一人だけ。そういう設定でした。 しかし魔人ブウ編において、ポルンガも一度に多人数の人間を生き返らせることができるようにパワーアップされてしまっているんです。 ナメック星人の手によって」 それがどうした、木野は思った。だから言った。「それがどうした」 「おかしな話ですよね。神と同等の存在であるはずの神龍やポルンガが、パソコンのOSをバージョンアップでもするかのように どんどん便利にされてっちゃってるなんて。確実に人間の命の重さを念頭に置いたはずの設定なのに」 「ご都合主義もほどほどに、ってことか? お嬢ちゃん」 「神なんてその程度、ということですよ、奇野さん」 少女は奇野に手を差し伸べてきた。握手を求めてきたわけではない。奇野は少女の意図を察し、右手に持っていた荷物を少女に差し出した。 荷物、といってもディパックではない。 奇野が今まで、山道の中で引きずるようにして運んでいた、それ。 それは人間だった。 少年と呼べるくらいの年齢にみえる風貌。 敏捷そうな長い足。 服装は作業服らしき、緑色のツナギ。 端正なその顔からは、完全に血の気が失せてしまっている。 口元からわずかに漏れる呼吸音で、かろうじて少年が生きているのが判断できるほどに。 少女は奇野からその少年を受け取ると、作業服の襟首をつかんで「よいしょ」と気合いを入れつつ、少年をジープの後部座席に放り込んだ。 「さて、奇野さん」ジープの後部座席のドアが閉められ、代わりに助手席のドアが開かれる。 「とりあえず私たちがすべきことは情報収集ですが、それに専念するというわけにも行きません。既に私たちより積極的な行動に 移っているプレイヤーもいるはず。警戒することも必要ですけれど、そういうプレイヤーに対してこそ、先手をもって 制していかなければなりません」 「言われるまでも」 「幸い『情報』に関しては、私たちは一歩先行していますからね」 少女は自分のディパックを背から下ろした。 「ドラゴンボールの世界では、ほとんどの戦いにおいて物を言ったのは当然のごとく戦闘能力。しかしドラゴンボール収集の クエストにおいては、重要なのはやはり情報だった。ブルマさんは本当に有能な技術者でしたね」 またもそんなことを言い、少女はディパックの中身をひとつ取り出した。 「………」 ドラゴンレーダー、ではあるまい。 しかしその形状は、限りなくそれを髣髴とさせる。 緑色の画面の中央部に、小さな光点がふたつ灯っているのが見える。それが何を示しているのか、確認することすら余計だと奇野は思った。 今のところ、このエリアに他の参加者はいないようですね――そう言って、少女はディパックを背負いなおした。 「生きるためには生き残ること。ここが戦場だというのなら、生き残るために戦いましょう。 たとえ舞台が神の手の上だったところで、たとえ相手が魑魅魍魎の集まりだったところで――」 少女は、鋭利な日本刀のような笑みを浮かべた。 「私の名前は萩原子荻。正々堂々手段を選ばず真っ向から不意討って御覧に入れましょう」 奇野は少女のその笑みに気を取られ、少女が何を呟いたのか聞いていなかった。 【1日目 黎明 雀の竹取山 B-8】 【奇野頼知@戯言シリーズ】 [状態] 健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本 とりあえず生きることが優先。そのためには誰でも殺す。 1 今のところは、少女の示すとおりにしておく。 【萩原子荻@戯言シリーズ】 [状態] 健康 [装備] 簡易レーダー(『生存者』の首輪に反応。同エリアにいる参加者の位置を示す) [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本 生き残るために、常に最善の策を考えておく。 1 情報収集を優先。特に参加者に関する情報がほしい。 2 今のところ、一番警戒すべきなのは目の前の「奇野」。 3 『彼』が参加しているかどうか気になる。 「裏技」「能力の制限」に関しては、実際は可能性のひとつ程度にしか考えていない。 「クビツリハイスクール」時点の萩原子荻。 【石凪萌太@戯言シリーズ】 [状態] 意識混濁 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) (現在は子荻が所有) [思考] 意識混濁のため思考停止中 005← 006 →007 ← 追跡表 → ― 奇野頼知 ― ― 萩原子荻 ― ― 石凪萌太 ―
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ストーリー 龍馬、土佐へ帰る 目前に広がる広大な海・・・・。 江戸での剣術修行を終え航路で土佐へ戻る途中、 船首に一人立ちながら、竜馬は思案する。 佐幕といった言葉が噴き乱れ、時代が変わろうとしている中、 今何を成すべきか・・・・。 答えは見つからないままだった。 四国の大藩・土佐藩。 階級という名の”身分の壁”が存在する時代遅れの土地は、 下級武士として生きる竜馬ら”郷土”を苦しめ続けてきた。 ”身分は人の命より重い”という不条理な道理がまかり通る世の中。 帰郷早々、そんな旧態依然とした土佐の現状を目の当たりにした竜馬、 上級武士に楯ついたことから獄へ入れられる。 「このまま一生を終えてしまうのか・・・・。」 そう覚悟を決めた竜馬の前に一人の男が姿を現す・・・・?! それは土佐でもっとも規律に厳しいと言われる参政・吉田東洋その人だった・・・・。 龍馬には、心の中で慕う恩師がいた。 藩の要職に就きながら、極秘裏に藩の犠牲になり 親兄弟を失った者たちの世話をする男。 それが吉田東洋の本当の姿だった。 東洋との再会を果たした龍馬は、同じ境遇を持つ兄弟分、武市半平太に 会うよう告げられる。 「機は熟した・・・・」 そう語る東洋の狙いは・・・・。 それは土佐の苛烈な階級社会の崩壊を目的とした一大クーデターだった。 土佐勤王党。時代を憂う若き下級武士によって結党された一大勢力。 その頂点に立つ長が、武市半平太だった。 幼き頃、土佐藩の身分制度のせいで親兄弟を失い、 吉田東洋に育てられた青年は、頭脳胆力秀でており土佐藩の中で憧れの 存在となっていた。 その武市が結成した思想集団。 それが、土佐勤王党の表向きの姿であった・・・・・。 武市は、吉田東洋のもとで育った竜馬の力を信頼し、 その帰りを待っていたのだった・・・・・。 だが、龍馬の顔は浮かない表情だった。 自分には、武市のような志がないという後ろめたさと 龍馬の幼き頃、家を焼かれた龍馬を武市が助け出した際に、 背中に大きな火傷を負った傷跡。 その傷を見るたび龍馬は自分に自信が持てなかった。 迷う龍馬に武市は必死に土佐の未来を語るのだった。 二度と自分達のような人間を作り出さないためにも、闘う必要が あると説く武市。 龍馬は東洋と武市の言葉を信じ、土佐藩崩壊の計画に参加するのであった・・・・。 土佐の政変から1年後・・・・。 京、伏見の大宿”寺田屋”の一室において、昼になっても起きてこない ぐうたらな男。 浪人 斉藤一。 その日も斉藤は、寺田屋の女将・お登勢、女中のおりょうに無理やり起こされ ると、博打を打ちにに出かけるのであった・・・・・。 数刻後、斉藤に近づく男がいた。 男は耳打ちした。 ”今日も博打を打つ振りをして犯人探しですか?” 表情を変える斉藤。相手を射抜くような目で見ると、ポソッと呟く。 ”親っさんを殺した男、あの剣を使う男はどこにいるんだ・・・・。” 斉藤一、その真の名前は坂本竜馬。 名を変え素性を隠し、京に潜伏する男が追うのは、 一年前土佐で起こった政変の夜、父と慕う恩師を目の前で斬り殺した 謎の剣士・・・・。 土佐を愛し、土佐に裏切られ 土佐を捨てた坂本竜馬の、命を掛けた戦い。 龍馬は決意する。 京で最も多い剣豪が集まると言われる、もっとも危険な場所に飛び込むことを・・。 街に血の雨を降らす最強の人斬り集団”新撰組”。 坂本龍馬の名を捨てた、斉藤一という男の新しい人生が、始まろうとしている・・・・。
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おやおや貴方とも有ろうお人が粗相ですかいやこれは違うのだよ如何違うと云うのですか これはだね何と云うかそう、膿だよと陳腐な事この上ない言い訳をしてしまった。これで 煙に巻ける筈が無いと思いながら熊の少女を見ると思案顔だった。膿ですかそれはいけま せん早く出さないとうむその通りだが今は君の足のほうが大事ではなかろうかいえそんな 事はありません。熊の少女は足を引っこめた。私は名残惜く思った自分を不思議に思った。 そうですね。熊の少女は無表情のまま告げた。私が其の膿を搾り取ってあげましょう。 熊の少女は其の小さな体の何処に有るのかと思える力を出して私を引っ繰り返して、丁度 先程迄の熊の少女と私の体勢が入れ替わった風にした。なかなかどうしてこの格好は恥 ずかしいね、そうでしょう私も其れなりに恥ずかしかったのですよと頬を染める様子もなく 熊の少女は言った。其のまま刹那の逡巡も無く私の一物を口にした。先程落ち着いたばかり と言うに私の愚息はすぐさま起き上った。其れほどまでに熊の少女の口戯は素晴らしかった。 ふふ如何ですか私の口は、いや素晴らしいね何処で習ったのか知らないけれどそんじょそこらの 花売りよりも勝っているのでは無いかな当然です私は貴方の、熊の少女は其処で言葉を止め もう一度一物を口に含んだ。それは愚息を奮い立たせるものではなく言葉通りに愚息を搾り 取ろうとする動きであった。そろそろ止めて呉れないか堪えるのが辛くなって仕舞った、熊の 少女は言葉を返す代わりに一物を思い切り吸い上げてから解放した。私は射精した、それは 盛大に射精した。熊の少女が一物から口を離したから当然それは私と熊の少女と両方に 降りかかった。あら離せと云うから離しましたがこんなに零れるとは思ってもいませんでした と熊の少女は云ったが早いか私の体についた精をぺろぺろと舐めていく。 戻る